セミナーの様子COMMEMTS
受講生の感想(2024年度)
【C「対話の場をデザインする」クラス】
セッション1 合意形成のレジティマシー
- 豊田先生が「代表者として話すことは難しい」とおっしゃっていましたが、それはなぜでしょうか?
何が発言を阻害しているのかを聞いてみたいと思いました。
(講師より: みなさんは、どうでしょうか?組織を代表して会議に参加していて発言を求められた時、「他の人はどう考えるか分からないので、勝手なことは言えないな」と思うことはないでしょうか?先日、ある自治体の方と話をしていた時も、「市役所の肩書ではなく個人として参加できたらいろいろ発言できるのに」とおっしゃっていました。)
- 豊田先生が佐渡に移住し、しかも他の農業の問題等、地域住民や企業を巻き込み行動をおこされているのを聞いて、流石だと感心しました。ここまで地域のことを考えてくれる研究者(人)がいれば、一歩一歩でも地域や人は、いい方向へ変化していくのではないかと感じました。情熱・熱意は貴重だと感じました。
- 次回、豊田先生と高田先生のセミナーの際、先生が共に取り組んだ合意形成の場で苦労した点、両先生が意見を交わし好結果に導けた事案等があればお聞きしたいと思いました。
- 両先生方のレジティマシー(正当性)の判断がいつも損なわれないように心掛けていることを教えて下さい。
(講師より: ありがとうございます。いくつか取り上げたいと思います。)
- 業務都合で今回のセッションを欠席させていただきましたが、豊田先生の講義動画が大変わかりやすかったので、セッションの内容を興味深く拝聴できました。動画で振り返りのできるしくみは今後も継続いただきたく存じます。
- 次回、豊田先生の佐渡島における合意形成の事例紹介をもっとお聞かせいただければと存じます。身近な課題を提起し、合意形成していくアプローチは私のような工場業務にも通じると思いました。リアルな苦労や、克服のプロセスを参考にさせていただきたいです。
(講師より: リアルな苦労、たくさんありますので、紹介したいと思います!)
- グループワークのテーマが理解しやすかった。
(講師より: 実際の状況はもっと複雑だと思いますが、ワークで考える時はシンプルな構造にブレイクダウンすると考えやすいですよね。実際には、対象となっているもの(今回の事例では図書館)が、どのような状況にあるのかを多面的に見ていく必要があるかと思います。)
- セッション冒頭、先生が「対話というコミュニケーションが大事、ディスカッションから対話に変えていきたい、と思っている」と言われていることが印象的でした。これまでのセッションも通じて、先生方みなさん、言葉の表現や意味合い、伝わり方を大事に捉えて丁寧に使い分けされているように感じています。
- 私は環境アセスメントの仕事に携わっています。従来の環境アセスの役割としては、開発事業にともなう環境負荷という“ネガティブ”な行為や影響をなくす若しくは軽減するという、マイナスをゼロに引き上げるものであるとの認識を持っていますが、理想的には“ネガティブ”を“ポジティブ”に転換することであると考えています。本セッションのテーマのひとつであった「図書館リニューアル」については、まずスタートがネガティブなものではないと思われますので、積極的な参加や合意を促しやすいものであるかと。開発行為のような、少なからず地域にマイナスを与えてしまうようなテーマについての合意形成の進め方、正当性、方法論的なものがあればお聞きしたいです。(対話の導入部分の伝え方や姿勢が特に重要であると考えています(ボタンの掛け違いを起こさない、不信感を抱かせない)→一方的なイメージで恐縮ですが、公共事業において、行政の方々はここが丁寧でなく、疎かにしているケースが多いように思います。
(講師より: 確かに本来の環境アセスは、ネガティブをポジティブに変えていくものと言えますね。伝え方や姿勢は、とても大切だと思います。具体的な事例をもとに、お話ししたいと思います。)
- 合意形成の持つ負のイメージ(調整や妥協)の転換の必要性と、その実践方法として、ゲーム的な要素を取り入れた対処はとても参考になった。また、現場の声を反映していないコンサル資料を否定せず(捨てず)に、初期解のように使い、そこから現場の声で改善していくというのも、できそうで普通はできないことだと感じた。個人的には、定量的なデータ分析をあきないとしているので、こういった不完全さとチューニングを前提とした初期解を提供するという意識も必要だと思った。
(講師より: この事例については、もう少し具体的にお話ししたいと思います。)
- 現行の学習指導要領は「対話的で深い学び」を掲げており、これは、合意形成という意思決定による社会運営を推奨しているように見える。理想を掲げ目標とすることはよいが、現実の学校が、教職員も生徒も、合意形成が民主的でなく、それは企業や民主主義の学校である地方自治も合意形成のプロセスが不透明か正当性がない。この葛藤期をどう乗り切るか。
(講師より: 私が対話の実践を支援しているとある高校では、地域住民や学識経験者からなる教育検討委員会に全生徒が参加していました。どのような理念にもとづいて授業を行なっているかについての教師のプレゼンを聞き、それに対するアドバイザーたちの議論を聞き、それをもとに生徒として学校教育に何を期待するのるかを考えていました。まさに多様な主体が参画しての対話の場が形成されていたのですが、その学校の理念には「エージェンシー」という言葉が掲げられています。学びの、学校づくりの主体として、子どもたちが成長していました。エージェンシーを大切にしている他の学校でも、生徒と教師が一緒に学校をガバナンスする姿が見られました。まだまだ一般的な事例とは言えませんが、こうした実践が、広がっていくように、わたしも働きかけていきたいと思います。)
- 合意形成とは・・・「XXXではない」という4つのポイントを指摘した説明のスライドがありましたが、ここで示された合意形成の定義がどのような場を想定しての説明かがよく理解できませんでした(一般論としてなのか、あくまで“地域対話における場”を想定してのものなのか。いくつかPJの説明をいただいた中で、里山未来会議のような場であれば適合しそうな印象を持ちました。)集団が物事を成し遂げようとする時に様々な課題が浮き彫りになり、その解決のためには「クリエイティブなコミュニケーションが合意形成に必要である」という点はとても共感する部分です(M&Aの交渉・合意形成の場においても双方の課題解決のためにソリューションを見つけ出す行為は正にクリエイティブさが求められます。一方で様々な制約条件がある中で行われる合意形成の過程において、上記4つのポイントは必要不可欠な事象であるとの認識です。
- 4つのポイントは精神としては理解できますが、実際の対話を踏まえた協議の場面では各ステイクホルダー間の利害調整(意見の調整)が行われ、相互に妥協点を模索しながら意見の調整が行われていることが大半だと思われます。したがって、理想の合意形成プロセスとして4つの視点を指摘されたものと思われますが、以降のご説明の中で、例えばどのプロセスが“説得すること・納得させることではない”ことの代替として盛り込まれているのか、などの要素を対比しながら説明がなされていると、より理解の醸成に繋がりやすいと思いました。
(講師より: 説得すること、納得させることは、結論が決まっているということだと思います。結論がほとんど決まっているものについては、合意形成ではなく「同意を得る」ということなのかなと思います。考える余地のあることはなにか、異なる意見を持つ人たちが共に考えられるテーマは何かを模索していくことが大切だと考えています。)
- 少し議論が変わりますが、講義の場で“交渉は合意形成とは違う”とのご意見を頂いておりましたが、小生の感覚ではM&Aにおける交渉は合意形成プロセスであるとの理解です。それは、買主と売主はM&Aを実行するという共通の目的に対して利害相反関係にありますが、基本的に相互にgood
faceでフェアに様々な協議事項を“話し合いのプロセス”を経て最終的に両者の合意事項として譲渡契約書に規定していきます。合意に至る過程では、買主と売主間の価格交渉だけではなく、様々な利害関係者との間で多くの事象について協議が行われ意見を取りまとめることになります。さらにその過程では、利害関係者間での調整や妥協点を見出していくことも行われます(妥協点を見出せない場合は交渉がブレイクすることになります)。
- 特徴的なのは、買主と売主側にはそれぞれ様々な利害関係者が存在しますが、基本的には各利害関係者からの意見を集約した買主と売主が代表して交渉・協議を行う点だと思われます。そして、そのループ(利害関係者との調整・協議→買主と売主の交渉→利害関係者との調整・協議→・・・)を繰り返し行うことで意見が集約すれば取引としてまとまる、ということになります。
- 参考までに、M&Aプロジェクトにおける利害関係者の相関図(一例)と利害関係者との合意形成プロセスについて整理したものを添付いたします。添付以外にも合意形成プロセスとして重要な論点はあります(講義でご説明いただいた“公平性”、”公正性”のポイントはM&Aプロジェクトを進める際の買主と売主との信頼関係の醸成、又は利害関係者の当事者となる“少数株主”の利益保護の観点でとても重要なキーワードとなります)が、議論が拡散してしまいますので省略しております。
- 先生のご説明の中で、市民が参加する文化の醸成といった言葉があったが、もしそれが必要な場合は誰が主導するべきか。事業者が働きかけるか、行政側が呼びかけるか、地元任せになるのか、色々な方法があると思うが、誰が引っ張るかにより参加した結果の方向性が大きく異なるように思われるため、お考えを伺えると有難いです。
(講師より: 市民参加の文化の醸成は、さまざまな場面で有意義な対話や話し合いの実践が積み重ねられることで進むことかと思います。)
- 「クリエイティブなコミュニケーション」において、強硬な反対派が要る場合は建設的な意見が出てこない、そもそも土俵に乗ってくれない場合も多いと考えるが、そのような場合にどう取り組んでいくべきか、お考えを伺いたいです。
(講師より: ケースバイケースだと思いますが、反対派が推進派に変わっていった事例について紹介したいと思います。)
- 一つの地域に入って、継続的に合意形成に関わることは、とても素晴らしいことであるが、同時に難しいことでもある。関わり続ければ、それだけ、内側の人になっていき、その分、制約も生まれてくる可能性もあろう。そうした状況下で得られた合意形成の知見の提供は貴重なものであった。
(講師より: そう思います。ですので、できるだけ異質なものでい続けようと意識しています。)
- “「議論」から「対話」へ”というお話がありましたが、豊田先生の定義する「議論」と「対話」を知りたいです。
(講師より: discussは立場を分けるという意味がいが強いですが、一方で対話はともに考えるという意味合いが強いです。異なる意見を視野を広げる契機として捉えて新たな見方を生み出すことを意識することが大切かと思います。)
- 里山未来会議の事例では、住民がテーマに対して前向きな考えを持てなかったとのことでしたが、会議には約60人が参加したとのこと。先の状況に対して多くの人が参加してくれたと思うのですがその理由や背景は何なのでしょうか(無関心層の参加)。(危機感?地域の習慣?)
(講師より: 無関心層へのアプローチは、いつも悩みます。本当に多くの人に参加してほしい場合は、対話の場づくり以外にもいろいろな工夫をします。)
- 今回の佐渡市の事例は、住民が主体となり且つバックキャストのアプローチが困難な状況で施策を合意形成するものだと思います。とはいえ、自治体、事業者、大学からの発案のようなので、これら機関もある程度主体的に関わっていると思うのですがその目的は何だったのでしょうか。課題抽出から施策立案、実行まで住民主体だと思いましたので、地域活性化の施策決定が目的というよりも、住民の協創体系の醸成や持続可能な市民団体の創設を目的としているのではと思いました。
(講師より: 前回の授業でお話しした事例は、佐渡市のものが多いですが、複数の事例を紹介しているので、いろいろなケースがあります。ただ、おっしゃる通り、市民参加という観点からの最終的なゴールは、参加のはしごのより深いレベルにある住民主導のまちづくりにあるかと思います。)
- 事業者や自治体が主体となり施策を行う時は、未来ストーリーを描き事業計画を立案して推進すると思われる(バックキャストからのアプローチ)。言い方を変えれば、ストーリーを描けないと事業としてリスクが高く進められないのではと思う。このような施策の時に、事業者、自治体、住民の3者が主体となり推進するにはどうしたら良いのでしょうか。つまり、事業者、自治体はバックキャストで考え、住民は自分たちのやりたいことから考え、それらを上手く繋げるようなやり方は現実的でしょうか(豊田先生が現在進行形で取り組んでいるのかもしれませんが)。
(講師より: バックキャストとフォアキャストを行ったり来たりしながら進めていっています。もう一つ、システム思考も大切だと思いますが、これはなかなか苦手な方もいます。森を見て、木を見て・・・ 現在を見て、未来を見て・・・)
- 対話による市民共創の合意形成がマッチするシーンの条件があるように感じました。挙げるなら何でしょうか。(錦澤先生の事例では難しそうな印象をもちました)
(講師より: このことについては、2回目の授業で考えたいと思います。)
- 地域で住民主体的な活動を行う時はキーパーソンが重要だとよく耳にします。そしてこのような人を育成することが重要だと。しかし、今回の豊田先生のセッションでは、キーパーソンの重要性は出てこなかったように思います。キーパーソン無しでも、住民が自発的に施策を推進していけるものなのでしょうか。
(講師より: 地域づくりの現場では、核になるキーパーソンがいることは多いです。ただし、わたしはコミュニティをつくることを心がけています。)
- 里山農業の未来デザインの事例で、文句を言ってた住民がアクションをおこすことで価値観が変化した(お金じゃない、という価値観になった)との説明がありました。合意形成は、知識共有し施策を決めて終わりではなく、施策実行により変化した価値観で再び合意形成をし施策を決める、継続的で終わりのない取組みだなと感じました。
(講師より: そうですね。それが合意形成が文化として醸成されていくことなのかもしれません。)
- 佐渡の事例での合意形成は、話し合いのみで1つの案を決定することができたのでしょうか。そこでは対立は一切起こらなかったのでしょうか。
(講師より: 対立というか、難しい状況は常にあります。話し合いと実践を繰り返していく場合が多いです。)
- 合意形成プロセスのpreは、佐渡の事例の場合は具体的にどのようなことをされたのでしょうか。
(講師より: どんな考えの人がいるかをヒアリングするといったことが一般的ですが、わたしが関わった事例の場合は、話し合いをしながらステークホルダー分析などを進めることが多いです。)

(2024年度C「対話の場をデザインする」クラス、セッション1 にて)
セッション2 人びとが語り始める場をひらく
- 「対話の場がうまくいっている・いっていない」をどのように判断していますか? −私の理解では、合意形成において追求する3つの価値(Fairness,
Justice, Creativity)がひとつ基準にあると思っていますが、具体的な状態や行動などの例があれば知りたいです。
- 天王川自然再生プロジェクトにおいて、当初ネガティブな思考を持っていた漁業関係者が、次第にポジティブ思考に変遷した事例は興味深い話でした。結果として、“当初漁業関係者が懸念していた事に対する手当(川が氾濫した際の損害賠償など)”の議論に発展せずにガス抜きで終わったことは不幸中の幸いのように思いましたが、本質的には、「漁業関係者が反対している理由、背景など懸念の所在を理解すること」が重要で、そして漁業関係者に対して、@どのように対話を図るのか、Aプロジェクト(天王川自然再生)で目指したいことの正確な認識を持って頂けるのか、その為に必要な要素は何か、を考えながら説明を聞いていました。
- 以前、M&Aのプロジェクトで次のような案件に関与する機会がありました(非協力的から協力的に)。
ある企業(親会社)から、子会社を売却したいのでアドバイザーになって欲しいとの依頼を受けました
子会社売却にあたっては、交渉相手(買手側)に対して子会社のあらゆる情報を提供することや買手側からの質問に回答するなど“子会社の協力”が不可欠です。
■しかしながら、子会社としては親会社から様々な指図を受けることなく自由に経営できていた為、引き続き今の親会社の下で事業を続けたいということでした
■したがって、当初子会社の経営陣はとても非協力的であり、事前準備としての情報開示を拒む、質問への回答がお粗末、約束していたミーティングをすっぽかす、自分たち(子会社)に都合が良いと考える候補先へ勝手にアプローチをするなど、好き勝手に動いていたことから親会社としても対応に困っていましたし、子会社の経営陣はアドバイザーである我々を“親会社の犬”と見做していました
■そこで、アドバイザーとして行ったことは、「子会社の経営陣が“売られる”から“相手を選択する”というポジティブなマインドセットになること」を期待し、親会社に以下に示すプロセスを盛り込むことに同意していただいた上で、子会社経営陣と誠実に対話することでした
◇前提として、親会社は子会社の意志に関係なく第三者へ売却できることを伝達(ただし、相互に協力することがWin-Winの状態にできることも併せて説明)。一方で協力頂けるのであれば、
◆子会社の希望も考慮し交渉に臨むこと(多様な声の収集及び交渉状況のFB)。新たなパートナーとなる買手候補の選定プロセスに子会社として参加してもらい意見を汲み取ること(プロセス及び意思決定の透明性)
◆我々アドバイザーの雇い主は親会社ではありますが、上記点についてアドバイザーとして責任をもって対処すること(ある意味、アドバイザーに対する信頼を醸成できるかだと捉えています)
当初は子会社経営陣も疑心暗鬼ではあったものの、プロセスが進むにつれて子会社経営陣との信頼関係が徐々に醸成され、結果として親会社、子会社共にハッピーな結果となりました。余談ですが、プロジェクト終了後、子会社の役員から素敵なディナーへ招待いただける迄に
これらのポイントは、正に今回ご説明いただいた「合意形成のプロセスデザインで追求する3つの価値」のうち“公平性”と“公正性”に該当するものと思いながら、昔の出来事を振り返っていました
- 「話し合い」というと「話させる」アウトプットさせる能動面を連想させるが、「耳を傾ける」「相手に感心を持つ」「空間設定」などが、人の思いを引き出し、語り出すということは留意したい。
- 今回のテーマはグループディスカッションしたかったです。短時間でもよいので、グループディスカッションの時間をとっていただくよう、お願いします。
- 個別事例から一般化することの困難さを感じた。
- もう少し受講生が議論に参加できるような仕掛けがあると、お二人の先生の対話がより有意義になったかと思います。
- 自分が現在携わっている民間事業で、公園計画に関するワークショップを行うことになったのですが(自分の業務の範疇外)、自治体からの「公園計画に関しては、ワークショップなどを開催し、広く住民の意見を聴くこと」という意見に対して、「事業者が対応していることを見せる」ためだけのワークショップとなる気配がしています。
- 今回のセッションを受講して改めて考えてみると、事業者は「意見は聞くけど計画は変えるつもりがない」というスタンスを全く崩さないので、変更の余地がない、意見や思いを発散させるためだけの会なのかなと思い、不毛に感じてしまいました。
- 自治体も事業者も簡単に「ワークショップを開催」と言いますが、開催することが目的になってしまっていて、合意形成を目指すという本来の目的が忘れ去られている・そもそも理解していない気がしています。合意形成学が世の中にもっと広まるといいなと思います。
- 討議での意見内容を全て根拠資料として開示したケースの話を伺った。非常に説得力のある資料が出来ると考えるが、広範囲に意見聴取・アンケートを行う場合も同様か。一部の声の大きい団体の意見が相対的に多くなり、それに引っ張られてしまうリスクもあると考えます。多数の市民に意見を聞く場合のレジティマシー確保の有効な方法について伺いたいです。
- 多様なステークホルダの存在下で合意形成に受けた討議を行う場合、ファシリテータは有識者、外部企業者等の第3者が行う事が良いか。中立性は保たれる一方、地元の状況の理解が不足する場合もあると考えるが、ご意見を伺いたいです。
- 今回のセッションでご紹介いただいた事例等、先生は、行政(自治体)の方からのご相談をうけて対話の場づくりに取り組まれるケースが主かと思いますが、計画・設計側のコンサルなどと意見の対立や食い違いが生じた場合、どのような解決(合意形成)を図られているのでしょうか。
- 先生方は、あくまでも中立的な立ち位置であり、意見の対立や食い違いは生じ得ない、行政・地域住民・コンサル間の意見のバランスをとるイメージで合ってますでしょうか。
- 事業者やコンサルは経済性、費用対効果を重要視しており、地域住民や専門家の意見を取り入れる、複数回の対話の場を設けるといったやり方は極力避けたいと思われていることはないでしょうか。私自身はコンサルという立場で事業に関わっていますが、このようなジレンマを感じることが多々あり、「急がば回れ」のもと、じっくりと地域住民との関係性を構築していくことが、実は最短ルートである、ことを理解してもらうことは難しく感じています。この点について、先生のお考えや打開策があればお聞きしたいです。
- 豊田先生と高田先生との対談の中であった、透明性の確保の観点から、「整理してお戻しします、はしない、ニュースペーパー(表面は概要、裏面は生の声(丸めない))作成、その場でワークショップの内容をまとめる、その場で確認して終わらせる」は大変有効であり、重要なことであると学びました。
- 天王川自然再生事業において、初期の激しい反対者の心が変化していく裏側で、できるだけのことは全てやったという言葉に、合意形成のプロセスデザインは、システマティック(紋切り型)にデザインするだけでは決して十分ではないという印象を(勝手に)強めました。ゲリラ戦のような(適時即応的な)アプローチが取れるだけの基礎理解と、実地経験が得られるような機会を大事にしていきたいです。
- 今回のセミナーで、豊田先生はファーラムが激しい論争になった場合等は、皆の合意形成なので“どちらでもいいと考えている”というコメントに共感しました、それが中立である事だと理解しました。
- また、加茂湖再生の際に学生達にも理解しやすく専門的用語に資料を変えて参加者に配布したところなどは、影で合意形成を整える配慮をされているのだと感じました。
- 私自身も合意形成学セミナーで普段耳にしない用語に戸惑いもありましたが、どの先生方も必ず日本語で補足を添えてくれていたので、理解しやすかった。
- ネガティブなキーワードを、ポジティブに変えていくことのテクニックは重要だと感じた。
- 前に、私も、ドミナントからオルタナティブなストーリーへの変換を、ナラティブというキーワードで表現しようとした。場の設定というのは、各地域において、かなり熟練してきているが、ワードの変換の部分はあまり強調されておらず、ここの強化が今後のポイントと思われる。

(2024年度C「対話の場をデザインする」クラス、セッション2 にて)
