本文へスキップ

"Consensus Building" Seminar

セミナーの様子COMMEMTS

受講生の感想(2024年度)


【B「環境政策における合意形成」クラス】
セッション1 市民参加と合意形成

  • 他分野の方の合意形成における課題を伺うことで、自分の課題も比較、計画化でき、参考になった。
  • 合意形成と一言で言っても、紛争状況から平和状況があること。また、土砂処分場計画のように高い水準で体系化されたものから、屋久島プロジェクトのように創造的に進められるものがあることを知り、合意形成には科学的な知見に加え、常に創意工夫を求められるのだと実感できました。
  • 大学が関わる事例がどうしても多くなる。本セミナー参加者は、事業者・住民側が多いため、その視点からの意見や感想が多かった。地域内の大学か地域外から来る大学かによって、「参加者分析」の位置づけや方法も異なると思われるが、外から来る開発事業者も共通点があるとは思われる。住民側から見れば、事業実施を前提とされると、事業を正当化するために必要な利害関係者だけを選定することにならないかと考えられる。昨今の政治不信、専門家不信などを同時に解決したいくにはどうしたらよいか。
    (講師より:参加者分析は事業実施を前提に意図的に分析対象から外すことはしないと理解します。逆にいうと、参加者分析の結果を示すことで、必要なキーパーソンが調査対象として含まれているか、会議参加者に必要なキーパーソンが含まれているかどうかを確認することができるという意味もあると思います。)
  • 合意形成に関する手法(会議、文章、電磁的)や会議体(フォーラム、アリーナ、コート)といったベーシックな説明は参考になった。
  • 屋久島の事例においては、多様な価値観をもつメンバーとの合意形成のプロセスを説明いただき、大変興味深かった。小生の組織においても多様なバックグラウンドをもつ、ダイバーシティ経営を進めているため、業務にも参考になる講義であった。
  • アカデミアがスムーズに市民との対話に入っていくプロセスが参考になった。小生の組織においても、産学連携を積極的に行っている。有意義な場をつくるためには、産側の能動的な参加が必要であり、産側からのボトムアップをもっと促さなければならないと感じた。
  • 様々な事例を盛り込んでいただき、合意形成のプロセスの理解が進んだ。
  • 今回の例題「屋久島における循環型社会形成に向けた合意形成」で、ステークホルダー会議 での論点をまとめるのは、錦澤先生方が取り纏めたと思いますが、利害関係(島民への影響) を明確にしながら、どのようなにして個々の論点を取り纏めたのかお聞きしたいです。
    (講師より:個別に出てきた意見をもれなく掲載して成果物として示すことは問題なかったのですが、「まとめ」のような形で示す場合には、参加者から異議が出ることがありました。例えば、観光客の入込客数をどうするか、ガイド認定の仕組みをどうするかについては、取りあげるべき論点として共有されましたが、一部の参加者から意見があったバス会社の運転手マナーの問題については、「まとめ」に入れることは不適切という意見があり、取り扱いを考慮する必要がありました。)
  • 本日のセッションでは、「周知が重要」という点に強く共感しました。私は仕事として環境アセスメントに携わっております。事業に伴う環境影響について地域住民に対して広く周知し理解度をあげていただく必要があり、そうすることで合意形成の一助となると考えています。
    ・一方、事業者側は、いまだに法令上求められている最低限の手続きとの認識であり、周知範囲や内容について可能な限り絞り込んだものとする傾向にあるよう感じています(余計な火種は起こしたくない、との思想)。この点、先生はどのようなお考えをお持ちかお聞きしたいです。
    (講師より:事業に対して関心や懸念をもっている地域住民や関係者がいる場合、説明を聞いたり、懸念点を表明する機会が与えられないのは心理的なストレスになるでしょうし、事業者への不信感にもつながるおそれがあります。例えば、チラシなどで広く周知した上で、説明を聞くことを希望する人が相当程度いることが確認された場合は、説明会を開くなど、周知と説明を段階的に分けて対応することもあり得ると思います。)
  • 市民を巻き込んだ合意形成の難しさについては、公共性や事業種別、事業者のスタンスによって大きく異なってくると思っています。道路やトンネル、ダムなどの公共事業については国民の税金が事業資金となるものであり、巻き込むことは必須で、市民の考えを無視した事業を推進することは難しいかと。一方、民間事業者のプロジェクトについては企業自身の資金を用いるものであり、周辺地域への環境影響等についてもしっかりと配慮していることが示せれば、プロジェクトの中身について必ずしも市民の意見を取り入れる必要はないのではと思います。ただし、地域住民との良好な関係構築は重要なため、うまくコミュニケーションを図りながらご理解をいただく必要はあるかと。あらゆるケース・場面で多様な意見を取り入れることは難しく、時にプロジェクト推進のための強引さも必要であると考えています。
    (講師より:民間事業で参加機会を設ける意図は事業計画(プロジェクトの中身)の内容に対して意見を取り入れるというよりも、事業に対する影響や市民のさまざまな懸念に対して応える機会を確保するという点にあると思います。その結果として、事業計画の内容を修正することはあり得ますが。)
  • 本日のセッションにてお話のありました市民層の点ですが、例えば、途中で事業計画(範囲や位置)が変更となってしまった場合、各層を構成する市民も変わってしまうのではないか、と思いました。(例えば、事業範囲が広がった場合、当初無関係と思っていた層が新たに関心層に加わる、など)このような場合に、合意形成を効率的に進めるための手段があればご教示いただけないでしょうか。
  • 環境アセスメントの場面やその他の住民参加が求められる場面において、例えばSNSの活用、ネット広告媒体を用いた周知等により参加者数の増加や寄せられる意見数の増加、関心が高まった事例があれば、ご紹介いただけるとありがたい。
    (講師より:米国のアセス事業などでは、事業の周知や意見の聴取でtwitterやfacebookなどのSNSを利用するケースがあります。)
  • 「Arnsteinの参加の梯子」では、市民と行政のパートナーシップ、或いは住民への権限委任という形が市民参加の進んだ姿とされていると学んだ。現在の公共事業では行政が主導し、市民はパブリックコメント等のいわば自由参加の形となっていると思われるが、これを市民の義務として与える(例えば、裁判員制度のように)ことは制度的に不可能か。前回の坂野先生の講義のように国家的な課題についてDPの仕組みが適用された例があるが、より身近な公共事業という範疇での適用可能性についてお考えを伺いたい。
  • 今回はグループミーティングの時間が30分程度と長かったので、全員と議論が深められてとてもよかったです。個人的にはセミナー全体の時間をもう少し伸ばして、講義の時間をそれほど減らさずにグループワークの時間が確保されているといいなと思いました
  • 環境アセスに関する周知方法が問題とされた事例について、小川町メガソーラー事業、どこかの風力発電事業ともに、法律や条例に反することをしているわけではないと思うので、制度の側で何か見直してもよいのではないかと思うことがあります。実際問題として、事業者側にケースバイケースで地域の状況を把握して、周知方法や周知範囲を検討させるのは難しく、「必要に応じて対応」ではなく、「対応しなくてはいけないこと」としないと取組みが増えないと思っています。
    (講師より:アセスは従来型の規制制度とは異なり、手続規制あるいは情報交流を重視する制度なので、「対応しなくてはいけないこと」を一律に定めるよりも、個々のケースに応じて柔軟に進めていくプロセスが重視されています。アセスに方法書の段階が設けられているのもそのような趣旨と理解しています。)
  • 住民参加の合意形成となると、そもそもそこに参加する方々は行動層や関心層が多く、強硬な反対や賛成で議論をする雰囲気ではないことが多いのではないかと思いました。ゆえに、住民を一括りでとらえずに、関心レベルに応じた意識の違いを明確にしてそれぞれに対してどの様な説明をし妥当な合意を形成していくのかが公平なプロセスなのだろうと感じました。しかし、実際は参加する時点で相当のバイアスや強硬な意思があるため、主張のぶつかり合いや言い合いになってしまうケースが多いと思います。ゆえに、こうした対立した意見や相手の話を聞く気が無い人とどう向き合っていくか等合意形成への対話の技術を習得していくことを次回以降のセッションで学びたいと思っております。
    (講師より:強硬な反対意見を持つ人がいる場合にどうアプローチするかは難しい問題で「これをすれば必ず合意形成できる」といえる方法論はないと思いますが、反対運動が起きたケースの中には地域の納得や理解を得ながら事業を進めたケースがあります。本日の講義で一例をご紹介します。
  • 平和状況における合意形成の取り組みと手順を初めて学ばせていただきました。研究プロジェクトが発端のケースということで、地域住民の方々にとっては言葉ひとつとっても馴染みがなかったとのことで、Reader-Friendlyな説明と、ネイチャーゲームなど若い世代の方も参加可能となる状況を作る工夫は大変興味深い内容でした。その一方で、離島というある種閉ざされた、同調圧力が起きやすい空間での協議は、どこまで自由闊達な意見交換が実現できたのかが気になりました。講義中同様の質問が他の参加者の方々からもあり、対応方法の一例として匿名でのアンケートを挙げられておりましたが、匿名でもある程度推測できてしまうほど人口の少ない地域の場合においては、その後の地域の人間関係に悪影響を及ぼしかねず、かなり繊細なケースバイケースの対応が求められるのではないかと感じました。また、今回の屋久島のケースは成功例としてのご紹介でしたが、もし可能であれば失敗例をもとに、その原因や背景を詳細に洗い出すケーススタディなどがあればより理解を深められるのではと思いました。
    (講師より:屋久島の取り組みが成功例といえるかはわかりませんが、参加者分析によって論点を整理して議論の場を設ける、という手段の一つとして参考になると考え、ご紹介しました。屋久島のケースでは具体的な事業の賛成と反対で地域が二分するような状況にはなかったので、基本的には自由闊達な意見ができたと想像しますが、対立が起きているようなテーマを扱っていた場合、どうだったのかは検証できていません。)
  • プロセスの「周知」に関しては、事例を交え課題や対策を詳しく理解出来た。同様に「意見聴取」「意向集約」についても説明頂けるとよかった。
  • 前回の坂野先生のセッションでも「合意形成の場」に言及され6つ条件を説明頂きました。これら条件の中で「互いが協力的個人になること」「パレート優位な関係を創造すること」といった場の信頼/協力関係作りがあったのですが、実際の現場でこれらを実現するための具体的な取り組みがあれば知りたいです。


    (2024年度B「環境政策における合意形成」クラス、セッション1 にて)
セッション2 環境紛争と合意形成

講師より:貴重なご質問・ご意見をありがとうございました。全て十分にお答えすることができておりませんが、可能な範囲で回答しましたので、ご確認いただけますと幸いです。
  • (セッションサマリー内に記載した)上記のような事業者選定プロセスを導入することによる弊害、またはそもそも導入できない障害などあればご教示ください。
  • このような仕組みを再エネの事業者選定プロセスに適用しようとした場合、事業者が誰に対してプレゼンをすべきかについては議論になるかと思われます(行政なのか、地域住民なのか)。趣旨からすると、行政が間に入って仲立ちをする形で、事業者が地域住民に対してプレゼンをするのが自然ですし、それによって地域住民の当事者意識醸成に繋がるものと考えます。
  • その他、ビル・住宅建設にあたり太陽光パネルの設置を義務化、公共用乗り物(バス、タクシー、電車)への搭載義務化などでどの程度エネルギーを確保できるかといった検討、試算はなされているか。
    (講師より: 複数案の検討が日本で未だ浸透していないのは、時間とコストがかかること、それに見合う有効性があるとは認識されていないことなどが理由と考えられます。また、複数案を比較衡量して最適案を見出すには総合評価が必要になりますが、方法論が複雑化することも一因として挙げられます。米国の環境アセスメントは複数案検討を基本とするシステム分析の考え方に基づいて制度化された背景があり、複数案検討が事業者に義務付けられています。このため、事業者は選択の余地がなく必ず実施することになっています。その意味では米国では(アセスの)文化として根付いているという見方ができます。日本で複数案検討を根付かせていくには、例えば、環境アセスにおける実践をより厳格化・義務化することはあり得ると思います。その上で、事業計画の改善や合意形成上の有効性が認められるようになれば、根付いていく可能性があります。)
  • 本日のセッションの中で、事例紹介が大変印象に残りました。合意形成の種類(手法)として、個人との合意形成、地域・コミュニティーとの合意形成があり、合意内容や対象によりアプローチの方法や交渉内容が異なること、また、地域・コミュニティーとしての合意を得ることが特定の個人との合意に繋がること、を学びました。
  • また、今回のセッションの中で、先生が「合意」と「納得」という言葉を意識的に使い分けてお話されていることも印象深かったです。事業推進の上では、「合意」を得られずとも、対話やコミュニケーションを繰り返し図り「納得」いただくことが重要であると感じました。
  • 「合意形成」という表現ではなく、「受容度をあげる」という表現を最近はしているというコメントが印象に残った。
    (講師より:「合意」を制度の中でどう位置付けるかは課題の一つだと考えています。合意形成の定義によりますが、合意形成を事業実施の要件とすると、事業が進まなくなり過剰な規制になるおそれがあります。強い反対が起きるケースでは全員が賛成するということにはならないことの方が普通なので、「納得」あるいは「受容性」をいかにして上げるかが現実的な解決策になると考えます。したがって最近は、再エネの紛争事例や住民の態度形成を対象にした研究において、「合意が形成できたか?」ではなく、「受容性が高いか?」という問いの立て方で研究することが増えています。)
  • セッションの回数を重ねることで、受講生の方々と意見交換も行いやすくなってきました。今回は、錦澤先生がグループセッションの質問は2つ程に纏め、セッションサマリーで各自質問くださいとご指導いただいたのは、時間配分的にもよかったと感じました。
  • もう少し受講生同士のディスカッションの時間・機会が長いとよいと思います。
    週末に動画を拝聴しようとすると、動画を開けないトラブルが2週続いている。スムーズに開けるよう、改善をお願いする。
    (講師より:ご意見ありがとうございます。今後の授業において改善・参考にさせて頂きます。ディスカッション時間を短く/長くすべきかどうかは、受講される方によって意見が分かれるようです。受講者の皆さまの様子を伺いつつ、臨機応変に判断したいと思います。)
  • ・環境開発に関する合意形成というテーマについて、受講者間でのグループディスカッションを通じて、あらためて関心の高さを感じることができた。環境保全とエネルギー開発、この対立が、住民対企業の関係性ともなっている現実の中、どのようにして共創関係を見出すことができるのか、今後の課題であると思うし、まずは意見交換の機会の必要性が高いと感じる場面が多くあった。この政府レベルでの合意形成は、私には手におえるレベルではないが、正面から向き合い続けることの大切さを感じた講義であった。
  • 自治体による再エネ抑制策(条例制定)の話がありましたが、坂野先生のセッションで取り上げた「国立の景観問題における自治体と住民による互換的利益関係での自己組織的制度の制定」が適用されるべきではないかと思いました。条例という形で自治体だけの責任の下に全地域同じルールで強制するのではなく、自治体と地域住民が環境保全のような互換的利益関係のもとにそれぞれルールを作り運用し法的にも強制力を認めるような形です。地域ごとにこのようなコミュニティとルールがあることで、事業者側の周知もしやすくなるメリットもありそうです。実際、そのような事例や動きはないのでしょうか。
    (講師より:都市計画における地区計画のような制度でしょうか。あるいは、(法的な拘束力はありませんが)建築協定やまちづくり協定のようなものもそれに該当するかもしれません。ご指摘にあるとおり、再エネの分野でも、自治体全域を対象とする条例やガイドラインだけでなく、特定エリアの地域特性や地域的文脈を考慮したルールづくりが今後求められるべきだと感じました。その場合、どこまで強制力や効力をもたせることができるかは検討が必要になります。)
  • 環境影響の低減における紛争後の事業者対応に関しては、住民側が異議申し立てができるという観点で「手続き的公正」の要件の1つかと思いました。また、このような手続きができることが合意形成の場の「コート」に相当するように思います。前回のセッションで、日本では「コート」は採用されていないとのお話がありましたが、上記から日本でも「コート」は必要に思います。採用されない理由が知りたいです
  • 共同事実確認の事例に関して、最後まで納得していない人も「最初は反対していた人」からも説得されるようになり「やむなし」で賛成した、とのエピソードがありました。共同事実確認での決定はこのように反対者がなくなるまで議論するのでしょうか。
  • 環境政策の合意形成において、地域住民側の代表者として地方議員は何か役割を担ってくれないのでしょうか?
    (講師より:イギリスのインスペクター制度のような「コート」の仕組みがより広く活用されるべき、との考えに異論はありません。ただ、日本人がそのような仕組みをどこまで受け入れるのか、許容できるかはやや疑問があります。「コート」は利害対立等の問題解決を第三者の判断に委ねて、その決定に当事者が従う仕組みと理解しますが、日本はどちらかといえば、話し合いによって当事者間で解決することを望む傾向にあるかもしれません。)
  • 再生エネルギーの生産地での紛争事例が多く、発電事業の消費者、受益者は紛争地から離れている。NYMBYとは違った、地域の経済発展の格差が原発立地を生んだのと違った経緯ながら、同じような自体が起きている感じ、都市と地方の格差の問題にもみえる。
  • 世界の再生可能エネルギー導入状況の推移は、今回初めて知りました。太陽光など、日々の暮らしやニュースの中で、景観を壊してまでなぜそこまで普及を急ぐのかなどと思っていましたが、こういったエネルギー情勢の実態を知らない自分が情けないなと思いました。
  • オプションを持つという場合に、「立地」に認知が偏るのは、基地問題等々の報道の影響なのかはわかりませんが、いずれにせよそのような偏りが自分の中にもあったので、それを自覚できたのはとても良かったです。
    合意形成の過程で、物理的変更を含む対応がなされることの意義が示唆される結果(P23)は、感覚的にはとても腑に落ちました。ケースバイケースだと思いますが、自身が何かの合意形成を図る際には、変更可能なパラメータを可能な限り認識するようにし、その上で変更すべき理由を検討する柔軟性を持ちたいと思いました。
    (講師より:丁寧なコミュニケーションなどの手続的公正の側面は重要ですが、事業計画を改善するといった分配的公正が理解や納得を得る上で決定的に重要になるという点は合意形成の基本的事項として押さえておくべきと思います。ご指摘の「変更可能なパラメーター」を複数案として提案することで、関係者の理解が深まり合意形成につながると考えます。)
  • 「合意形成」が学習テーマですので、ここについての解説や討論を深めることができれば学びが多い授業であったと思います。例えば、合意に至る過程として、紛争当事者にどの様な働きかけをしたのか、理解してもらうために何をしたのか等具体的な中身を知りながら、自分自身のケースに当てはめて学習できれば有難いです。
  • ゾーニングにあたり、促進エリアの判断基準の設定にあたり、社会的な受容性はどのように設定すべきか。環境面の配慮は自然公園、○○地域等を回避すればよいと思うが、地域要望、便益といった要素はどの程度考慮すべきか、すべきとすればその方法論について、ご教示頂きたいです。
  • 再エネ施設が迷惑施設という要素を持ち、地域との紛争につながる場合が多いとすれば、逆に地域便益等を予め明らかにし、公募する形で事業地を検討すれば紛争発生のリスクをあらかじめ低減できないか。そのような事例があれば、ご教示頂きたいです。
  • スライドP43に示された売電収入や還元率の設定方法についてお伺いしたい。規定によるものか、地域との協定によるものか、事業者の判断次第か、ご教示頂きたいです。
    (講師より:ゾーニングを策定する過程で、地域の要望や便益を反映させることは(必ずしも地理的な特性と結びつかないので)難しいと思いますが、促進区域を抽出する段階で地域で説明会を開いて意見を聞くことは一般的にされています。地域便益等を予め提示して事業地を公募するというのは聞いたことがありませんが、事前協議のような形(目に見えない形で)で実施されているかもしれません。再エネの売電収入の一部還元を進める事例がどのようなプロセスで導入されたかはよく知りませんが興味深いです。)
  • 今回のセッションにおいては「住民」対「事業者(あるいは公的機関)」における合意形成がフォーカスされておりましたが、実際の開発業務を行っていると、国(省庁)・都道府県庁・市区町村の各公的機関間での温度差や、場合によっては軋轢を目にして戸惑う場面がありました。特に環境政策は立場の違いなどによって求める方向性が異なるため、例えば都道府県と市区町村間においての連携促進と指針の一本化に向けた合意形成の事例などがありましたらぜひお教えいただきたく存じます。
    (講師より:自治体間の合意形成は興味深い視点だと思います。北海道檜山沖の洋上風力の事例でもある自治体が難色を示していて協議会のメンバーには加わっていないですし、その町と隣接する町が風力の環境影響の問題をめぐってトラブルが起きています。青森県では、現在、ゾーニングを策定していますが、市町村の考え方と必ずしも一致しないおそれがあります。長崎県の洋上風力発電では、県と二つの市が協議しながら合意形成したケースがあります。以下の論稿が参考になるかもしれません:長澤康弘,錦澤滋雄,村山武彦,長岡篤(2022)「風力発電のゾーニングマップ策定における社会的合意形成に向けた自治体の役割」環境情報科学51-2, 91-97。)


    (2024年度B「環境政策における合意形成」クラス、セッション2 にて)


前ページに戻る